どうする?相続人の中に行方不明者がいる!
(2022年4月1日時点の法令に従って解説しています)
母が亡くなり兄弟3人が相続人となりました。しかし、長男が数年前から行方不明になり音信不通で連絡が取れません。遺言書は無く遺産の分割協議を行わなければいけませんが、どうしたらいいのでしょうか?
行方不明の相続人がいる状況
このケースのように行方不明の相続人がいる状況で遺言書が無く相続が開始された場合には、非常に煩雑ですが手順を踏めば相続手続を進めることが可能です。
この場合、最初に行うことは行方不明者の現住所確認です。
現住所を調べるには、その人の本籍地がある市区町村で、戸籍謄本を請求しますが、その際に「戸籍の附表」も一緒に請求します。
「戸籍の附票」とは、本籍地のある市区町村が戸籍の原本と一緒に保管している書類で、住所地の移動の履歴が記載されています。その附表を確認すれば行方不明者の現住所を確認できる可能性があります。
現住所が分かれば、行方不明だった相続人に連絡を取り、分割協議を進めていきます。しかし、連絡しても応答がない、又は話し合いを拒否されてしまう場合には家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てるという方法があります。調停を申し立てると家庭裁判所から呼び出し状が送達され、家庭裁判所で話し合いを行い、遺産分割を成立させることになります。
戸籍の附票を取得しても、役所もその方の現所在を把握できていない、附表に記載されている住所に住んでいないなど、所在が全くつかめない場合、探し出すのは非常に困難です。このような状況で遺産分割協議を進めるためには、家庭裁判所に「不在者財産管理人選任の申立て」と、「不在者財産管理人権限外行為許可の申立て」を行います。申立てができる人は、利害関係人(不在者の配偶者、相続人である人、債権者など)と検察官です。
不在者財産管理人
申立書には、不在者財産管理人の候補者名を記載することができます。不在者財産管理人は親族もなることができますが、遺産分割協議を行う場合は、利害関係のある相続人が不在者財産管理人になることはできません。
不在者の法定相続分を確保することが原則
また、不在者財産管理人には、不在者の利益を保護することが求められています。その為に、遺産分割協議の際は、不在者の法定相続分を確保することが原則となりますので「不在者の相続分は無い」とするような遺産分割協議を行うことはできません。不在者財産管理人の仕事は、遺産分割協議が終わっても終了とはなりません。
「不在者が現れたとき」や「不在者の死亡が確認されたとき」まで、不在者財産管理人の仕事は続きますが、実務的には行方不明の期間が7年を超えるなど、「失踪宣告」の要件を満たした時点で、家庭裁判所に行方不明者の「失踪宣告の申立て」を行うケースが多いようです。「失踪宣告」は、生死不明の者に対して、法律上死亡したものとする制度です。この申し立てが認められた場合は、行方不明者が亡くなったものとして、行方不明者に分割された相続財産は行方不明者を被相続人として処理することになります。
上記のように、行方不明者がいる状況下で相続が開始された場合には非常に手間と時間がかかる煩雑な手続きが必要になるため、推定相続人の中に行方不明者がいる場合には、前もって法的に有効な遺言書を作成しておくことをお勧めします。そうすることで、相続開始時に行方不明者を捜索する手間がかかりませんし、分割協議をする必要もなく、スムーズに相続の手続きを行なうことができます。

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